新井素子再訪

久々に、新井素子の「絶句」という作品を読む。
amazonにリンク張ろうかと思ったら、もう新本で手に入らないのか画像が無かったのでいいや。

作者と同じ名前の女の子(というか、これを書いた当時の作者そのもの)が書いた小説の登場人物たちが、ある日突然原稿用紙の中から現実世界に飛び出してきてしまう。
状況が飲み込めずあたふたしている作者を尻目に、作者によって与えられた能力を活かし、彼らはこの世界で生活を始めるのだが…、といったお話。

この人の作品は殆ど持っている。

当時は彼女独特の「口語体を中心に据えた大胆な文体」は実に衝撃的であった。
まるで友達への手紙でも書いているような、およそ小説には似つかわしくないその文体で描かれる、背伸びしない、等身大の登場人物が同世代の読者の熱狂的な支持を集めた反面、「物書きとしてふさわしくない」「日本語の破壊である」などという批判も多かった。
まあ、それでも今のご時世では、ラノベの元祖とか言われてるんだろうなぁ、と思ってwikipedia見てみたらその通りになってて軽く吹いたりもする。

これ最初に読んだのは多分高校生の頃だと思うが、今読んでも面白い。

彼女の作品の主人公は、たいてい負けん気が強くて行動力のある女の子である。
自分を取り巻く「世の中」の不条理にぶつかったって、持ち前の行動力で立ち向かっていく。
それでも悩み、壁にぶつかり、自信を無くしてみたりもして。
それを乗り越える原動力となる情熱、自分自身の思い。
そういうものが(時には恥ずかしくなるくらい真っ正直な青臭いものであっても)決して鼻に付かないのは、それが高校生でSF作家としてデビューした、若い作者自身の心の叫びだからだと思う。

いい歳こいた大人が中高生を主人公にして、手垢の付いたネタをこねくり回して作っているあざといストーリーとは訳が違うのだ。

面白かったので、13年前に買ったっきりになっていた「ブラック・キャット」シリーズの第3話「キャスリング 後編」と第4話「チェックメイト 前編 後編」をポチることにする。

一番好きなのは「星へ行く船」シリーズ。
Commented by みずのき at 2008-08-13 01:54 x
明日図書館に涼みに&のらくろを読みに行くのでちょいと探してみますわ。
by hybrid-jp | 2008-08-12 11:09 | 平穏な日々 | Comments(1)

いつかどこかで考えたこと。


by hybrid-jp